ビジネス書は多すぎる?選べない?
毎年膨大な数の新刊が出版されるビジネス書。「どれを選べばよいのかわからない」「流行についていけない」と感じたことはないでしょうか?
さらに、「読んだけど内容を思い出せない」「行動に結びつかない」という人も多いはず。時間をかけて読んでも自分の血肉にならないのは、もったいないですよね。
そんな悩みにヒントをくれるのが、19世紀の哲学者ショウペンハウエルの名著『読書について』です。今回は、この本から10の名言を取り上げます。
読書の目的を考える:娯楽と実用の違い
読書にはさまざまな目的があります。小説やエッセイを楽しむ娯楽としての読書も素晴らしいものです。
ただ今回は、ビジネス書=仕事や生活に活かすための読書、という目的に絞って考えます。
ショウペンハウエル『読書について』とは?
ショウペンハウエル(ショーペンハウアー)は19世紀ドイツを代表する哲学者で、その思想は、かのニーチェや多くの文学者にも影響を与えました。著作『読書について』は、短い一篇ですが、現代にも通じる読書術の本質が詰まっています。
彼は、「読むこと」と「考えること」の違いを明確にし、単なる情報摂取ではなく、思考と熟慮によって知を自分のものとする姿勢を説いています。
名言:読書術を深める10の言葉
『読書について』から10個の名言を取り上げ、4つのグループに分けてご紹介します。
グループ1:読むだけでは意味がない
名言1:
読書は、他人にものを考えてもらうことである。
名言2:
ほとんどまる一日を多読に費やす勤勉な人間は、しだいに自分でものを考える力を失って行く。
名言3:
熟慮を重ねることによってのみ、読まれたものは、真に読者のものとなる。
情報をインプットするだけでは意味がありません。本やネット記事、ニュースなども、自分なりの仮説や評価、使い方を考えてこそ価値が生まれる。読んだ後に「これはどこで使えるか?」を問い直す習慣が大切だと感じました。
グループ2:思考のプロセスを追体験せよ
名言4:
紙に書かれた思想は一般に、砂に残った歩行者の足跡以上のものではないのである。歩行者のたどった道は見える。だが歩行者がその途上で何を見たかを知るには、自分の目を用いなければならない。
本の内容を追うだけでは足りません。なぜ著者がそのように考えたのか、前提や論理の流れを丁寧にたどる必要があります。思考回路ごとコピーする意識で読むと、応用力が高まります。
グループ3:読まない勇気と選書眼
名言5:
悪書は、読者の金と時間と注意力を奪い取るのである。
名言6:
読まずにすます技術が非常に重要である。その技術とは、多数の読者がそのつどむさぼり読むものに、我遅れじとばかり、手を出さないことである。
名言7:
良書を読むための条件は、悪書を読まぬことである。人生は短く、時間と力には限りがあるからである。
新刊やベストセラーに飛びつくのではなく、自分の問題意識に合った本、繰り返し読むに値する本を選びたい。私は、1冊をじっくり読み込むことを意識するようになりました。
グループ4:忘れることを恐れず、記録を工夫する
名言8:
我々は書物の購入と、その内容の獲得とを混同している。
名言9:
読み終えたことをいっさい忘れまいと思うのは、食べたものをいっさい、体内にとどめたいと願うようなものである。
名言10:
重要な書物はいかなるものでも、続けて二度読むべきである。それというのも、二度目になると、その事柄のつながりがより良く理解されるし、すでに結論を知っているので、重要な発端の部分も正しく理解されるからである。
すべてを覚えておくのは無理。大事なのは、必要なときに思い出せる形で記録しておくこと。本に直接メモを書き込んだり、アンダーラインを引いたりすることも、ためらいなくできるようになりました。
読むべき本は『読書を仕事につなげる技術』(山口周)を参考に
良書を読むべきなのは理解した。じゃあ何を読めばいい?そんな方はぜひ山口周さんの『読書を仕事につなげる技術』を手に取ってみてください。
『イノベーションのジレンマ』
『企業参謀』
『失敗の本質』
『ビジョナリー・カンパニー2』
その他、厳選された数々の名著が紹介されています。
また、この本を紹介したもう一つの理由として、ショウペンハウエルといくつかの共通点があります。
例えば、
5冊読むより「1冊を5回」読む:
→ 古典・原典に当たるべき。エッセンスをまとめた解説書を読んでも経営リテラシーは高まらない。なぜなら、著者の思考プロセスを追体験することで学べるから。また、深みのある本を何度も反芻しながら読むことで初めて知的体力がつく。
「忘れる」ことを前提に読む:
→ 記憶力に頼らない。重要なのは、情報を効率的に「ストック」し、自由自在に活用すること。
新刊ビジネス書の9割は読む必要がない:
→ 新刊ビジネス書に書いてあることのほとんどは、古典的名著に書いてあることを繰り返し説明しているに過ぎない。
ベストセラーは1冊たりとも読まない:
→ 費用対効果が低いため。なぜなら、読んでいる人がたくさんいて差別化の要因にならないから。また、ほとんどの内容が数年で陳腐化するから。読書を投資行為と考えた場合、もっとも大きなコストは「自分の時間」。
など、『読書について』の名言とのつながりに気づくと思います。
さいごに:読むことは考えること
『読書について』は、単なる哲学書ではなく、情報過多の現代における読書の指南書です。読書は、知識を得るためではなく、自分の考えを深め、行動に活かすためのもの。
ビジネス書を読む皆さんにも、ショウペンハウエルの名言が、自分なりの読書スタイルを見直すきっかけとなれば幸いです。