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その採用、戦略的ですか?【その3】

こんにちは。マキシムです。

採用活動において「いい人材を見つけたい」と思うのは、どの企業も同じです。しかし実際には、「面接で辞退される」「採用ページに反応がない」といった悩みを抱えている企業が少なくありません。

今回は、中小企業が “選ばれる存在” になるための情報発信(採用広報)と、面接の設計・準備におけるポイントを具体的に解説します。


採用情報の “伝え方” で共感を得る

求職者は、求人票の「給与」や「勤務時間」だけを見て応募しているわけではありません。
私の所感ですが、「どんな人たちと働くのか」「この会社にどんな価値観があるのか」を重視する傾向が強まっているように思います。

E社では、以前まで求人媒体に頼るだけの採用活動をしていましたが、なかなか応募が集まりませんでした。そこで、採用専用ページを作り直し、社長メッセージと社員紹介のコンテンツを加えたところ、応募者の反応が明らかに変わりました。面接では採用ページの内容に触れる応募者が増え、お互いの理解をより深めやすくなったそうです。


社長の言葉は、 “なぜこの会社が存在するのか” を語る場

トップのメッセージには、企業の“顔”としての役割があります。
理念やミッションを押しつけがましく語るのではなく、

  • 「私たちはこんな社会課題を解決したくて、こういう思いで会社を運営している」
  • 「これからこういう仲間と、こんな未来を目指したい」
  • 「中小企業だからこそ、あなたの役割はとても大きい」

といった、等身大の言葉で“なぜこの会社で働くのか”を考えるきっかけを提供することが大切です。

→ これは採用ページの冒頭近くに掲載するのが効果的です。
 動画メッセージでも、300文字程度のテキストでも構いません。


社員紹介は、 “自分もここで働けそう” と思ってもらう材料

社員紹介も非常に強力なコンテンツになります。
重要なのは、単に「◯◯さん(営業部)/入社3年目」と書くだけでなく、

  • なぜこの会社に入ったのか
  • 実際にどんな仕事をしているのか
  • 難しかったことと、それをどう乗り越えたか
  • 上司やチームとの関係はどうか
  • プライベートとの両立や価値観の変化

といった、「働く実感」が伝わるストーリー形式で紹介することです。

もちろん、顔出しや実名が難しければ、「30代男性/事務職」「20代女性/設計」などでも問題ありません。
写真ではなく、イラストやインタビュー形式で“雰囲気”を伝える工夫も効果的です。


採用に “ストーリー” を持たせる

求職者は「入社後の自分」を想像しながら、企業の情報を見ています。
だからこそ、以下のような情報があると、応募への心理的ハードルが下がります

  • 1日の仕事の流れ(職種別)
  • 入社後3か月・半年の成長ステップ
  • 上司・チームメンバーとの関係性
  • 社内行事・Slackの様子・ランチ事情 etc.

情報発信の “設計” が母集団の質を変える

採用広報は、単なる “企業の自慢話” ではありません。
「誰に、どんな想いで来てほしいか」を丁寧に伝えることで、共感してくれる人との接点が生まれます。


採用は“選ぶ”行為ではなく、 “選ばれる” 行為でもある

F社の二次面接に臨んだ応募者は、戸惑いを隠せませんでした。
一次面接とほぼ同じ質問が繰り返され、「社内で面接内容が共有されていないのでは」と不安になったのです。

もちろん、同じ内容をあえて二度確認することは悪いことではありません。ただ、その場合は一言「一次面接と重複する質問になりますが、改めてお考えをお聞かせください」など、配慮のある前置きがあるだけで、応募者の印象は大きく変わります。

G社では、面接官がその場で初めて履歴書を開き、「ふーん」と言いながら書類をめくっていました。実はこのような場面は、採用部門の責任者を“とりあえず”面接に同席させただけというときによく起こります。準備不足のまま場に臨み、場当たり的に質問を重ねてしまう――その空気は応募者にも伝わってしまいます。

こうした事態を防ぐには、

  • 面接の目的(人物像のすり合わせか、条件面の確認か、価値観の確認か)を事前に明確にすること
  • 面接官には、事前に履歴書や応募理由などの情報を共有すること
  • 質問内容とその意図(何を見たいのか)をセットで整理すること

が重要です。

そして、アドリブで質問をどんどん重ねる面接は、慣れないうちは控えるべきです。「なんとなく印象で決める面接」は、ミスマッチと早期離職のもとになります。

求職者は、ただ “見られている” だけではありません。その場で、「この会社は自分のことをちゃんと見てくれているか」「信頼できる人たちか」を鋭く観察しています。

面接の設計と姿勢は、企業文化そのものが表れる場です。選ぶだけでなく、選ばれているという意識を、面接の場でこそ丁寧に持つことが求められます。


まとめ:採用=組織の未来を形にする経営戦略

採用は、人を補う作業ではなく、未来の組織を構想し、つくりあげるための経営戦略です。

  • 欠員を機に、業務と組織の再設計を考える
  • 「誰に来てほしいか」を社内で明確にする
  • 外発的な条件だけでなく、内発的動機を高める場づくりを目指す
  • 伝え方・面接の在り方も「共感を育てる」一貫したプロセスにする

採用がうまくいかないときこそ、自社の組織・文化・戦略を見直すチャンスかもしれません。


補足・留意事項

※本記事は、私自身が人材支援や採用活動に関わる中で得た経験と考察をもとに構成しています。業種や職種によって状況は異なるため、すべての企業に当てはまるとは限りません。採用に悩む中小企業の一助となれば幸いです。

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